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2015年11月30日 | Posted by フク

フォトグラファーズレポート ~真月洋子さん~

みなさんこんにちは、フクです。

今回のフォトグラファーズレポートは、写真家の真月洋子さんにご登場いただきます。真月さんは写真展や写真集の出版を中心に精力的な作品活動を行っている写真作家です。今回のお話をうかがう2ヶ月前にも新宿のエプサイトにて写真展「floating sign」を開催しました。この展示はグラフィティや自然現象を「sign」として捉え、それらを写真や映像、構成が変化する本などで展開しました。現在同ギャラリーにてプリント作品も販売中です。

<真月洋子(まづきようこ)さんプロフィール>

1963年  愛知県生まれ

生家である古い日本家屋の中でのセルフポートレート、人の身体が生来持っている「インナープランツ」など、皮膚の触覚がとらえている時間や気配、匂いを写真によって表現し、各地のギャラリーやアートスペースで発表。

また、2002年のドイツ・デュッセルドルフ滞在時から映像作品の制作も開始。

翌2003年 名古屋市美術館での映像インスタレーションの発表を皮切りに、音楽、パフォーマンス、演劇の映像演出へも活動の幅を広げている。

~「この状況を変えなければ」が作家活動のはじまり~

フク:「はじめに真月さんが写真家になった経緯についてお聞かせください。」

My1

真月さん:「写真が自分の表現手段として合っていると自覚したのは18歳頃でした。私は絵を描くことが好きで、大学もデザイン学科に進学したのですが、絵で何かをしようとか、グラフィック関係の仕事に就こうとは考えていませんでした。それよりも将来自分が社会に出るまでの準備期間として、いろいろなものを見たり、体験したいと思って大学へ行っていました。ですから在学中も学校には籍を置いているだけのような感じで、現代アートのギャラリーに行って作品を見て、作家さんが在廊していたらお話を伺うような大学生活を送っていました。」

フク:「その時に写真に興味が湧いたのですか?」

真月さん:「写真にはもう少し前から興味があったのですが、現像やプリントの方法を知る術はありませんでしたので、写真集を見ているだけでした。」

フク:「なるほど~。では実際に写真を撮るようになったのはどのようなきっかけだったのでしょう?」

真月さん:「当時、アルバイトをしていた本屋さんにジャン・ルー・シーフとイリナ・イオネスコの写真集の注文が入りました。2人とも当時好きな作家でしたので、「どんな人が注文したんだろう?」と興味を持ち、その人が受け取りに来店した際に声をかけさせていただきました。そこで自分も写真に興味があることも言いました。しばらくして、そのお客様が金属疲労の写真を撮るアルバイトを紹介して下さり、そこで写真の撮影や現像のひと通りを覚えるようになりました。」

フク:「すごい出会いですね。アルバイト先ということで同じ職場の人かと思いましたが、まさかお客さんがきっかけなんて。」

フク:「ところで金属疲労の写真とはどういったものだったのですか?」

真月さん:「ちょっと特殊で、金属を人工的に経年させ、その結果を撮影する仕事です。肉眼ではほとんどわかりませんが、顕微鏡で拡大していくと亀裂が入っていたりするので、そうしたものを撮っていました。」

フク:「はじめての写真体験が顕微鏡写真というのは面白いですね。」

真月さん:「そうですよね(笑)。あとは独学で写真を勉強していきました。作品づくりを始めたのはこの頃からです。」

フク:「この時から作家活動を意識されたのですか?」

真月さん:「いえいえ。当時は見よう見まねで写真のことも写真業界のことも全くわかりませんでした。」

フク:「しかしプロフィールを拝見しますと、1983年つまり20歳の頃に初の個展をされていますね?結構早い段階で作品活動をされていると思いました。」

真月さん「:いや、もう無茶苦茶ですよ(笑)。何も知らない状態でいきなりやってしまいました。本当に若気の至りです(笑)。」

真月さん:「七ツ寺共同スタジオという演劇の公演をメインでやる劇場に写真展をやらせて欲しいと頼みに行き、公演の少ない冬にやったのが初個展でした。企画が通って写真展の開催が決定した途端にプレッシャーで撮ることができなくなったことを覚えています。」

フク:「初個展「牡丹」はどんな展示だったのですか?」

真月さん:「私が住んでいた愛知県に中村遊郭という、もともと遊郭があった場所があるんですが、そこを中心にモノクロ写真で撮った作品を展示しました。当時は告知の仕方も知りませんでしたので、ごく身内の人に見てもらう雰囲気でした。」

フク:「初個展を機に作家活動をやろうと思ったのですか?」

真月さん:「写真作家を明確に意識したのは1997年ですので、それから結構時間が経ってからなんです。83年の写真展がきっかけで85年に2回目の写真展をやり、89年に3回目をやりましたが、以降しばらく作品を発表しない時期がありました。金属疲労の撮影のアルバイトが終わり、次のアルバイトがあまりにも忙しくて作品発表ができなかったのです。時間をぬって撮ってはいたのですが、作品として固めていくことができない状態が何年か続きました。そんなある時、朝日新聞で1年間写真と文章の連載記事を担当しませんか?というお誘いをいただいたのですが、忙しくて、とてもじゃないけどできないと、断ってしまったのです。作品を作るために、就職せずにアルバイトをしていたのに、アルバイトが忙しくて作品が作れないというのは本末転倒です。これがきっかけで「自分は一体なにをやっているのだろう?この状況を変えなければいけない」と思い、そこから作品発表する活動を生活の中心にしました。写真家としてスタートしたのはその頃からといえます。」

~コンセプトはフレキシブルに。ハプニングはウェルカム~

フク:「写真家、写真作家としてスタートしてからはどういった作品を作られたのでしょう?」

真月さん:「「a priori」という作品を手掛けました。このシリーズは人物の体に植物のスライド映像を投影し、それを撮った作品です。小さい頃、小児喘息を患っていまして、田舎の空気の良いところに預けられていた時期がありました。祖父が漢方に使う植物に詳しくて、祖父から植物のことを色々と教わり、植物に対する親しみ易さや人間の身体の中にも植物とそんなに変わらない部分があると感じたことがあったのです。そんな経験を具体的なものにすることはできないだろうか?と思って作り始めた作品でした。」

フク:「なるほど。ところで真月さんの作品には動画を使ったものもありますが、これはどういった経緯でできたのでしょう?」

真月さん:「はじめに動画作品を作ったのは名古屋市美術館での「現代美術のポジション2003」というグループ展の時でした。それ以前から動画には関心があって、展示のお話を受けた時に動画を展示したいとお願いしたのです。」

フク:「動画と写真は真月さんの中でどのような共通点または差異があるのですか?」

真月さん:「勝手な印象なのですが、写真は垂直方向に重なりながら流れを形成するのに対して、動画は横にスクロールする形で流れを作っていると思っていました。写真と動画で流れの方向が異なるのです。そこを利用したら何かが作れるのでは?と試みたのが動画作品のきっかけです。「現代美術のポジション2003」展では1階と2階をつなぐ階段に動画にした「a priori 」を投影し、身体に投影した植物の写真をさらにお客さんの身体に投影するようなことをやってみました。」

フク:「会場の写真を拝見しましたが、かなり大きい階段全面に投影されていますね。すごい迫力だったと思います。」

フク:「9月にエプサイトで開催しました「floating sign」でも波の映像作品を展示されていますが、これもその発展型と思うのですが、なぜ波を縦にしたのでしょう?」

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真月さん:「これを撮った当時、ビデオ用の三脚がなかったのです(笑)。写真用の三脚は縦位置に対応するよう雲台が動きますよね?はじめは縦で撮ろうなんて考えていませんでしたが、雲台を動かしているうちに、カコーンとビデオが縦になったのです。映像を見て「なんだこれ?すっごい面白いな」と思いまして縦位置の波を撮りました。」

フク:「写真と動画の流れの方向の違いという話に戻せば、縦方向に動く流れになります。しかしこの手法って偶然の産物ですよね。本来だったらミスだから、横で撮り直すと思うのですが、それを新しい発見に結びつけるところがすごいなぁと思います。」

真月さん:「なんでしょうね?そもそも私が作品を作る時って、所々に偶然の産物とかアクシデントが入ってできるものが多いんですよ。それらを取り込みながら作品を完成させていくというか・・・。それは私自身あまり最初にコンセプトを固めていないからかもしれません。」

フク:「コンセプトを固めない?」

真月さん:「手を動かしているうちにコンセプトを固めていくという方法です。ですから途中でアプローチを変更したり、起きたハプニングをむしろ歓迎するような姿勢で作っています。」

フク:「当初イメージしていたものと、異なるものが出来上がるということですね?」

真月さん:「そういうこともあります。軌道修正やハプニングってマイナスなイメージに捉えがちですけど、見方を変えてみますと外部から入ってくる要素が作品に膨らみや厚みを持たせることもある。そう考えますと、そういうチャンスを逃すのはもったいない。ですから変更、修正ができるようにコンセプトをフレキシブルな状態にしています。そう言うと格好いいですが、本当は自分がだらしない性格なのかもしれません(笑)。」

フク:「作品づくりの上で非常に参考になるお話です。」

真月さん:「もちろんこれは私の場合ですけどね。徐々にゆるいものを固めて行くことは心がけています。」

~写真・映像・本で空間すべてが作品に~

フク:「「floating sign」展ではその写真と動画の他に、会場中央に本を展示されていました。」

Epsite_201502

真月さん:「「パタパタ本」と呼んでいる写真集ですね。原版はA3ノビサイズ、主に東京の落書きが残っている風景をプリントして裁ち落とし、写真を張り合わせて本にしたものです。この本は特に見る順番はありません。例えば6面の写真を広げて、その一部をめくると先程とは違う組写真が出来上がるように、都会の風景やその場所に対するイメージが変化していく様を表現したものです。額装した写真や製本した写真集ではできない流れが、私と作品との関わり方にも近いと思い作りました。」

フク:「なるほど、「floating sign」展のタイトルの意味がようやく分かってきたように思います。そうして思い返すとこれは本当に面白い試みですね。写真や映像の中身だけではなく見せ方や流れ方を含めて空間そのものが作品なのですね。」

フク:「この展示プランは先程のコンセプトのお話のように、制作過程で浮かんできたのですか?」

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真月さん:「今回はキュレーターの小林美香さん、柿島貴志さんと相談しながら詰めていきました。」

真月さん:「当初は写真とパタパタ本を展示しようと思っていて、動画は考えていなかったです。しかしパタパタ本を会場中央に置くことが決まり、パタパタ本を中心に向かい合う壁面の一方は動画と水の流れの写真、もう一方に人の手によって残された痕跡と人の意識の届かない影の風景を展示することが決まっていったのです。」

フク:「今後のご予定などはございますか?」

真月さん:「「floating sign」のシリーズは今後も続くのですが、東京の風景のなかでも人工的なものから自然のものへとシフトしていこうかなと考えています。相変わらずフレキシブルでゆるゆるしていますが・・・(笑)」

真月さん:「来年は台湾での展示とイタリアのフォトフェアに出展する予定です。」

フク:「来年は日本だけではなく海外でも益々ご活躍される年になりそうですね。最後に作家を目指す人たちに一言お願いします。」

真月さん:「特に私からアドバイスというのはございませんが、最近の若い方の展示を見ていますと、いい意味でこれまでの写真の見せ方とは違う、自由な見せ方を試みていると思います。例えばギャラリーの壁紙を変えたり、立体物を持ち込んだりなど、ひとつの表現に必要なものをどんどん追加するような見せ方です。」

フク:「見る仕組みや環境までも表現の中に取り込んでいくという方法ですね。」

真月さん:「そうですね。これはいい面もあり同時に悪い面もあるのかもしれませんが、表現方法を限定しないようにしていても「写真はこうして見せるべき」という一種のルールみたいなものは染込んでいて、それが葛藤を生み出すこともある私にとっては非常に参考になると思って見ています。こうしたことも含めて、これからは一層写真の見せ方が重要になってくるのかなって感じています。」

いかがだったでしょうか?

それではまた、宜しくお願い致します。

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