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2015年01月31日 | Posted by フク

フォトグラファーズレポート ~須田誠さん~

みなさんこんにちは、フクです。

2015年最初のフォトグラファーズレポートは、旅の写真を中心に作品を展開する傍ら、『須田誠 写真ワークショップ』を主催している写真家の須田誠さんをお招きします。

<須田誠(すだまこと)さんプロフィール>

東京出身。写真家。

ニューヨークに滞在二年、世界撮影旅行二年を経て写真家となる。

帰国後、東京都写真美術館内のカフェにて開催した写真展が好評を博し、2007年『NO TRAVEL, NO LIFE』にてA-Worksよりデビュー。第5刷・25,000部を突破。ニューヨークにあるNY近代美術館 MOMAでも発売される。

EXILE等、多くのアーティストとコラボ。世界中で人物撮影を中心にアート分野でも活躍。ファッション誌DUNE編集長林文浩氏、旅学編集長池田伸氏、EXILE・USAらから高い評価を受ける。

現在、毎月開催されている『須田誠 旅・写真ワークショップ』は、すでに47期生、600名を越える人気のクラス。毎月開催(須田誠で検索)

~バンドから出版社、そしてアメリカへ~

フク:「須田さんは昨年11月に開催したmeet up! Learning(※1)でも作品を出展してくださいました。写真との出会いも面白く、サラリーマンから急遽転身という経歴をお持ちです。まずはその辺のお話から伺いたいと思います。」

Sm1須田さん:「そうなんです、僕は最初サラリーマンだったんです。さらに遡りますと、高校の時分はバンドをやっていまして、「絶対ビックになって世の中を見返してやる」なんて思っていました。パートはベース。当時はオイルショックで中小企業がどんどん倒れていた頃で、高校を卒業してバンドをやるなんて周囲から反対されるような時代でした。ですから高校卒業前の親と先生との三者面談でもバンドの話をしたのですが、先生は全然こちらの話を聞かず、「須田くん着物の営業という仕事があるんだけど、どう?」なんて言われました(笑)。当時の高校は進学・就職率が大切だったのでバンドなんて話にならなかったのでしょうね。結局バンドを続けるにしてもお金がありませんでしたので、高校卒業後はしばらくレコード店に勤めました。」

フク:「バンドマンのコースまっしぐらという感じですね。」

須田さん:「レコード店でジャズやレゲエといった高校では聞くことのなかった様々な音楽を聴いて、音楽の幅を広げながらバンドを続けていましたが、ある時音楽雑誌に僕の大好きなベーシスト、スタンリー・クラークの記事が載っていて、そこに彼の手が日本人の2倍くらい大きいと書いてあったのです。この記事を読んで「これは絶対にかなわないな」とバンドの道を諦めて、音楽の裏方に回って応援しようと出版社に入りました。出版社って今でこそ少しラフなイメージがありますが、当時は終身雇用制がしっかり敷かれていて、続けていたら必ず上へ行けるというシステムでした。ですから最初はバンドで世の中を・・・なんて言っていましたが、徐々に社会に慣れていき、給料が上がって役職もついて、結婚して車を買って家を買って、最後は老人ホームで終了なんていう生き方が理想だなと思うようになっていました。」

フク:「バンドマンと真逆なライフスタイルに・・・。」

須田さん:「まさに逆です。そしてこの頃に初の海外旅行でアメリカに行きまして、そこですごいカルチャーショックを受けました。」

フク:「アメリカのどこへ行かれたのですか?」

須田さん:「ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコです。ニューヨークでは朝から晩までライブハウスとか大きなスタジアムでコンサートを見て楽しんでましたね。ただ、僕が行った時はちょうどタイミングが悪くて、滞在した前後の期間に大きなイベントがあったのですが、会社員が休みを調整して行っている手前、滞在を延長できず行けませんでした。そこから毎年夏休み、冬休みを利用してニューヨークへ通うようになり、28歳の時に意を決して留学することにしました。」

フク:「周りには反対されましたよね・・・?」

須田さん:「30歳手前で会社を辞めて海外に行くなんて世間体的にはあり得ないという時代でしたね。当然両親からも反対されましたし、当時結婚を約束していた彼女もその両親も反対しました。留学は当初3ヶ月の予定でしたが、向こうが楽しすぎて結局2年いました。」

~シンガポールで一眼レフに呼ばれる~

フク:「ニューヨークの留学中に写真と出会ったのですか?」

須田さん:「いいえ。留学後日本に帰ってきてからレコード会社に勤めました。ディレクターとして海外のミュージシャンをプロモーションする仕事で、たまたま音楽に対する知識があって、英語が話せる人ということで募集があったのです。この頃日本はいわゆるバブルの絶頂期。CDがたくさん売れていました。僕もイングヴェイ・マルムスティーン(※2)のプロモーションに関わり、CDの売り上げを初登場で1位にしたこともありました。おかげでアメリカのレコード会社から呼ばれてVIP待遇を受けるなどずいぶん貴重な体験もできました。しかしバブルがはじけた時に自分を少し見失っていたなと実感しまして、留学していた頃のマインドに再び戻そうと思い、会社を辞めて旅に出始めたのです。写真との出会いはこの時の旅からでした。」

須田さん:「この旅もはじめは3ヶ月のつもりでしたが、東南アジアを回るだけで3ヶ月は過ぎてしまい、結局2年ほど掛かりました。カメラに出会ったのは旅の途中に寄ったシンガポールでした。シンガポールにトランジットで寄った時に街をブラブラしていたのです。そこでパッと振り向いたらショーケースに一眼レフカメラがたまたま置いてあって、軽い気持ちで買ってみたのです。それが初めての一眼レフです。長い旅をしているのでお金の節約は必須だったのに、なぜあんなに高額なカメラを買ったのか、どんなやり取りをして買ったのかなど、その時の記憶は不思議とまったくありません。僕の一生を決める出来事だったので、きっとカメラに呼ばれたんでしょうね。本当に出逢えて良かったです。そのカメラは東南アジア仕様のEOS888でした。この辺の旅のエピソードは僕の本「NO TRAVEL, NO LIFE」に詳しく書いてありますので、読んでもらえればと思います。」

フク:「一眼レフカメラはもともと操作することができたのですか?」

須田さん:「いえ。この時がはじめてでした。説明書も英語でしたし、読んでも写真用語が多くてわかりませんでした。一眼レフカメラを首から下げている観光客の人に「このボタンは何なの?」なんて聞いたりしながらちょっとずつ理解していきました。」

フク:「一眼レフを手にしてから写真家として作品を作ろうという意識がうまれたのでしょうか?」

須田さん:「自分の写真を作品にしようなんて考えてもいませんでした。ましてやフォトグラファーになるなんて思いつきもしませんでしたね。あくまでも旅の思い出の記録であり、帰国したらスライドで友達に見せようくらいの事しか考えていませんでした。旅先で売っているフィルムを買いながら撮っていましたので、カラー、モノクロ、ネガ、リバーサルとフィルムの種類もバラバラでしたし。」

フク:「2年間の旅の中でどれくらい撮影したのですか?

須田さん:「10,000カットぐらいでしょうか。撮影したフィルムは10本ほど貯まったら袋に入れて実家に送り、冷蔵庫の野菜室に入れておいてもらいました。」

フク:「撮った写真をすぐに見たくなったりしませんでしたか?」

須田さん:「一度どうしても見たくなって旅先で現像に出したことがありました。カラーリバーサルフィルムでしたが、現像されたフィルムを見て「写真ってこんなに綺麗なのか」って思わされましたね。それは写真の美を知った最初の体験だったと思います。」

フク:「フォトグラファーを意識されたのはその後なんですね?」

Sm2須田さん:「旅から帰国してしばらく経ってからです。現像した旅の写真は、キャビネサイズのプリントにして友達に見せたりしていましたが、その中に何人かフォトグラファーの知り合いもいまして、彼らが「写真うまいよね!」なんて言ってくれました。自分の旅を自慢するために見せていたので、まさか写真がうまいなんて言われるとは思っていませんでしたし、第一どういう写真がいいのか悪いのかという基準すら分かりませんでした。きっと旅先の空気感のような味が出ていて、それを「うまい」という言葉にしてくれたんじゃないかな?そうやって見せているうちにちょっと欲が出てきて、個展をやってみたのです。まずはキャビネ版とか2Lサイズくらいの小さいプリントを5枚でした。日本でも旅カフェなんていうのが出始めて、旅に対して脚光が当たりだしていた頃でした。そこで見てくれた人からも「いい旅の写真ですね」という高評価をもらいまして、そこからコンスタントに展示をするようになっていきました。徐々にフライヤーを作って、会社員だった頃の出版社の人や代理店、芸能人なんかに案内を出しながらやっていました。もちろん写真の賞を受賞したりなんてこともありませんので来てくれることはほとんどありませんでしたが、そんなことを9年くらい続けました。

須田さん:「写真活動のターニングポイントは、先出の「NO TRAVEL, NO LIFE」を出版したタイミングでした。この本は東京都写真美術館内のカフェで展示をする時にA-WORKSの高橋歩さんに写真展案内を出したことがはじまりで、いい旅の写真だからぜひ見て欲しいというメールを送ったらすぐに「webサイトを見せていただきました。ぜひ写真集を作りましょう。」という内容の返信が来たのです。彼とは面識がありませんでしたし、本人は沖縄に住んでいるのでいらっしゃらなかったのですが、展示会場にA-WORKSの編集の方が来てくれまして、そこからしばらくして2007年に「NO TRAVEL, NO LIFE」が出版されました。」

No_travelno_life_4
フク:「この本すごいですよね。私が持っているのは第5版ですもの。」

須田さん:「写真だけではなく文章も入っていますので、純粋な写真集ではないのですが、写真家として意識を明確に持つきっかけになったといってもいいと思います。」

~ワークショップでは写真を教えない~

フク:「「NO TRAVEL, NO LIFE」もさることながら、「須田誠 写真ワークショップ」もすごいですよね。通算受講生が600名を超える盛況ぶりです。これはどういった内容のワークショップなのですか?」

須田さん:「シンガポールで一眼レフを持つようになって、そこから20年写真をやってきました。それ以前は音楽だったり旅をしてきたわけですが、音楽、旅、写真の中で僕が感じたこと、人に伝えたいなと思ったメッセージは似ているんです。ワークショップではそのメッセージを写真を通して伝えている感じです。」

フク:「そのメッセージとは?」

須田さん:「「自己との対峙」です。写真は指先をたった1mm動かすだけで作品が完成してしまう媒体です。時間にすると8000分の1秒から長くても数分、数時間。絵画や彫刻などの制作と比べると、とんでもなく短い時間です。そして今はカメラの性能も向上していますので、赤ちゃんが押しても、僕が押しても、他の有名なフォトグラファーが押しても適正露出で撮ることができます。でも面白いことに、みんな同じように撮ることができるのに、それぞれが撮った写真から伝わってくるものは皆違ってきます。これって何なんだろう?というのを突き詰めると、写真は撮る人そのものが写るんじゃないかというところに行き着くのです。ですから撮る人そのもの、すなわち「自己」を再確認する作業こそ写真において最も大切なことなんじゃないかなと考えたわけです。

須田さん:「ワークショップでは自己との対峙を実践するためにLook、Feel、Imagine、Takeの4つの柱を挙げています。まずはよくものを見ること(Look)。スマートフォンやデジカメで大量に撮ることはできるようになりましたが、一方でものをしっかり見ないうちに撮ったり、撮った写真を見なかったりすることが多くなりました。自分の身の回りをじっくり見ることからはじめ、そこから感じたり(Feel)想像したりしながら(Imagine)、ようやく写真を撮る(Take)というプロセスを身に付けます。そうすると、例えば家から会社までの見慣れた道のりも実は面白いものだらけじゃないかと気付き、視界の変化のようなものが起こりはじめるのです。初心者クラスではこの4つの行動を徹底して行うことからはじめています。

須田さん:「その次の表現力アップクラスは、その上で自己との対峙を行います。ここでは24ページの1冊の写真集を作るのですが、ワークショップ内で写真を撮ることはしません。演劇、音楽、映像を取り入れながら、撮った写真を選び、構成し、ディスカッションをしながら編集していきます。写真には自分の生き方がそのまま出ますので、やっているとどんどん苦痛になって途中で投げ出したいという人も出てきます。しかしこの作業を繰り返すことで「自分とは何か」を発見することができます。写真集が出来上がる時は毎回感動的で、泣き出してしまう受講生もいます。表現力アップコースは僕のワークショップの醍醐味を味わえるんじゃないかと思います。」

フク:「写真を通して自 分を見つめ直す、生き方を伝えていくようなワークショップなんですね。」

須田さん:「カメラの概念や撮影の技術というのは確かに大切ですが、それはネットで調べればいくらでも出てきます。僕のワークショップは技術だけではなく、もうひとつ写真を撮る上で大切なメンタルの部分に重点を置いています。僕の授業では写真も生き方も僕は教えません。自己と対峙し考える中で気づきや発見を掴み取るワークショップです。僕自身もこのワークショップを通して新たに得るものが多く、例えばインクジェットプリントによるデータ処理なんかもひとつの気付きがありました。エプソンさんのプリント講座をうち独自で開催しているのですが、その際の講師・小澤さんからは、プリントのことはもちろん哲学など沢山のことを学ばせてもらっています。彼に幾つか写真のデータをプリントしてもらった機会があったのですが、そこで出来上がったプリントはコントラストを落とした少し柔らかいものでした。いつもの自分の作品のメッセージは、コントラストを上げて見せることで伝えられると思っていましたので、僕からすると全く逆の発想だったのです。しかし用紙とデータの処理がマッチして今までよりもしっくりきていたのです。この時自分の人生も写真もコントラストを上げるだけじゃないんだなって気づかされましたね。」

フク:「2015年も須田誠 写真ワークショップは開催するのですか?」

須田さん:「はい。一年通して開催しています。初心者クラスは週1日合計4回、表現力アップクラスは3ヶ月で合計7回がそれぞれワンクールになっています。4月から心機一転、会場が若者文化のメッカ下北沢のギャラリー・シモキタテラスに移籍します。駅を降りただけでワクワクする街ですし被写体の宝庫でもあります。ギャラリーを併設していますので、授業修了後の生徒の展示など発展性の高い教室になると思います。」

フク:「なんか私も一度行ってみたいですね。」

須田さん:「大歓迎です(笑)。是非来てください。」

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▲須田さんの作品。

-須田誠 写真ワークショップ 初心者クラス

http://travelfreak.jp/ws-beginner/index.html

※1)meet up! Learning:「ワンランク上の写真表現を目指す」をテーマに開催された写真トーク&セミナーイベント。2014年11月22日に3331 Arts Chiyodaで開催。

※2)イングヴェイ・マルムスティーン(Yngwie Malmsteen):1963年生まれ ギタリスト、作曲家。1992年発売の「ファイアー&アイス」はリリース当日に10万枚以上を売り上げ、日本で初登場1位となる。

いかがだったでしょうか?

それではまた、宜しくお願い致します。

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