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2013年06月30日 | Posted by フク

フォトグラファーズレポート ~佐藤ケイジュさん~

みなさんこんにちは、フクです。

梅雨のジメジメ、天気も変わりやすく、なかなか撮影にでかけられない今日この頃をお過ごしの方もおおいでしょうか?

もうすぐ夏本番!夏~秋にかけての輝かしい自然とその季節のうつりかわりや情景、撮影心を擽られる季節はもうすぐです。

そんな中、今回お話を伺ったのは写真家の佐藤ケイジュさんです。佐藤さんのスタジオにお邪魔し、お忙しい中かなりお時間を割いて頂き、楽しくまた考えさせられるお話を伺う事ができました。特に作品創りの中でも撮影についてのお話は非常に興味深く伺えました。

“どこにいって何を被写体にしたか”ではなく、“撮り手側がその瞬間・空間にどんな情感を感じてそれをどう表現したか”が大切で、写真は“いかに写さないか”、うつらない部分に観る側へ“何か”を感じさせるかが重要だと。曇ってるから、雨が降っているから、撮影にはいけないなぁ、、、なんて思わず、特別な場所ではないその今の中に何を感じるかを考える、まさに梅雨時期の今の撮影にもヒントになるようなお話だったのでは?と思ったりしてます。

そんな観点で読んで頂くと、また違った何かを感じ取ることができるかもしれませんよ↓↓

~人生をかえたのは饅頭の写真~

Sk1 フク:「佐藤さんの経歴を拝見しまして目に留まったのは、会社を退職してスタジオアシスタントになったというところでした。
まずは何故、会社を辞めてまで写真の道にいこうと思われたのでしょうか?」

佐藤さん:「サラリーマンの頃も、全く違う仕事をしていたわけではなく、主な仕事は写真撮影でした。
私が勤めていたのは饅頭や洋菓子、コロッケなどの惣菜の製造機械を作る会社でして、そこで様々な実験の模様や試作品を記録撮影する仕事でした。
僕が写真の面白さを知ったのは饅頭の物撮りをしている時に、トレーシングペーパーをフラッドランプの前に置いて光を拡散させた時でした。」

フク:「当時フラッシュは使っていなかったんですね。」

佐藤さん:「スタジオ用のストロボがまだ普及していない時代で、高価でもありましたから撮影に使う照明は、フラッドライトがメインでした。
トレーシングペーパーも、写真を撮っていてもどこか自分の写真が格好悪いなと思っていた時に、偶然スタジオライティングの本を見て知ったという具合でした。
はじめはどうしてそんなのを使うのかも分からず、とりあえずやってみると、これまで饅頭に落ちていた陰が柔らかくなったんです。
今思うと当たり前のことなんだけど、これがすごく衝撃で(笑)。
そこから写真を本気でやっていきたいと思ったのです。」

フク:「どこにきっかけがあるかわからないですね。」

佐藤さん:「ほんとですよね、なんせ饅頭ですから(笑)。そこから写真家の沢渡朔さんの事務所にアポイントをとってアシスタントにしてほしいと直談判に行き、採用されず・・・」

フク:「またいきなり大御所のところに・・・」

佐藤さん:「フラッシュのことも全く知らない人間が、、、今考えると無謀でした。
でもそこで沢渡朔さんが、六本木スタジオという撮影スタジオを紹介してくれたんです。そこで仕事を勉強して、覚えた頃にタイミングがあえばうちに来なさいと言ってくれました。
僕は27歳でしたが、話を聞いて「よし、じゃあ行くか」と決心したのです。」

フク:「27歳から下積みは大変だったんじゃないですか?」

佐藤さん:「当時の六本木スタジオのアシスタントは、激務で有名でした。
深夜までの撮影、その後片付けが終わったかと思うと翌朝の撮影が始まるという感じでした。僕たちアシスタントはホリゾントの上で撮影用の黒布を掛けて仮眠をとる毎日です。
当然辞めていく人も少なくありませんでした。」

フク:「スタジオにはどれくらいいたんですか?」

佐藤さん:「1年半ですね。その後某出版社の写真部長の紹介で撮影プロダクションにアシスタントとして入りました。そこに5年ほど勤めてから独立しました。独立した頃はちょうどバブルが弾ける直前でしたかね。」

~ピント・露出・画面構成は作者の主張~

フク:「ところで佐藤さんは、いつ頃からデジタルを扱うようになったのでしょうか?」

Sk3 佐藤さん:「デジタル技術に触れたり勉強していたのは、かなり早い時期からでした。
勤めていた食品機械会社が電算機を導入するための社内講習会に参加したことや、プロダクションのアシスタント時代にPC−8001という国産のコンピューターを買ってプログラミングなどを勉強していました。
デジタルカメラが生まれる以前から、直感的に、近い将来コンピューターが写真を含めて全ての仕事の主流になるなと思っていたんです。」

フク:「それはすごいですね。」

佐藤さん:「そういうこともあって独立後すぐに、プリンターとマッキントッシュを導入しました。
マッキントッシュは当時高い買い物でしたが、周りのカメラマンが別荘を買ったり外車を買うために使っていたお金を、僕はすべてコンピューターにつぎ込みました。その後、僕にとって初めてのデジタルバックを買っています。」

フク:「デジタルカメラではなくデジタルバックだったんですね。」

佐藤さん:「まだ手軽に使えるデジタルカメラは世の中に無く、有るのは業務用としてのデジタルバックだけでしたし、欲しいレベルの画像を撮れるのがデジタルバックだったんです。
Leafのデジタルバックの個人購入者第一号だったと思います。いまでもLeafのデジタルバックとフォーサーズのミラーレス一眼をメイン使用しています。」

フク:「デジタル一眼レフは使っていないんですね。」

佐藤さん:「重いですからね(笑)。それだったらミラーレスで十分ですし、もっと画質を求める作品なら中判で撮ります。」

フク:「なるほどー。こうしてあらためて佐藤さんの作品を見ると、地平線や山の稜線を構成的に捉えているものが多いような気がします。どのように撮影場所を探すのですか?」

佐藤さん:「僕の作品は、撮影名所と言われているところで撮ったものは、ほとんどありません。車で走っていて見つけた風景を、道路沿いから撮った作品が結構多いんですよ。」

Sk5

フク:「そうなんですか?全くそのようには見えないです。」

佐藤さん:「写真だけみると分からないですよね。どこか山の奥に分け入って撮っているようにも見えます。ただ僕はそんなことはしません。
だいたい撮るのは道路脇だったり歩いて簡単にいける範囲です。ポイントは見つけたものを「どう撮るか」なんじゃないでしょうか。」

フク:「それはどういうことでしょう?」

佐藤さん:「写真はピントと露出、画面構成の3つの要素が揃ってはじめて写真になります。そしてこれらを決める判断は、作者の「どう撮るか」によって変化します。
すなわち写真の3要素は作者の主張そのものなのです。被写体を見つけ、それぞれの要素が決まれば身近にある被写体も力強い作品になります。
しかし多くの人たちにとって、最近はピントや露出はカメラ任せになってきています。
そこが昨今、似たような作品が増えてきている原因かもしれません。作者の意思を表現する3つの要素のうち2つはオート。
最後の砦は画面構成しかありません。しかしちょっと怖いのは、この画面構成も本などで構図法として解説されています。
三分割法とか日の丸構図といったものがそれですが、画面構成をハウトゥー的に教えてしまうと、結局それはカメラのオート機能と同じだと思うのです。
まるで車の教習所で、ハンドルは10時10分の位置に手を置いてこういう順番に運転しなさいと指導されているような感じです。」

フク:「確かにそう言われますと、ちょっと怖いですね。」

佐藤さん:「私の写真の半分以上は日の丸構図ですが、それはその一枚で何を見せたいのか追求して決まったものです。
知識として構図を決めようとするからみんな同じになるのです。
大事なのは何を見せたい写真なのかを追求する感覚ではないでしょうか?
このまま作者の表現意図を反映する場所がなくなってしまうと、いずれは写真を撮る理由がなくなるかもしれません。
こういう状況になってしまったのはカメラや機材が悪いのではなく、これまで撮ることばかりを育てていて、写真を見るといった中身の部分を育てる意識がなかったのが原因だと思います。
今後はここを少しずつでも何か改善していかないとと思ってます。」

~写真を育てるには観察~

フク:「育てるというのは、私達メーカーもやるべきことだと思いますが、具体的には何が必要なのでしょうか?」

佐藤さん:「写真の中身を育てるというのは、大掛かりな催しをやることではありません。撮影する時の意識を少し変化させるだけで十分です。
それは被写体をしっかり見ることだと思っています。例えば森の木を撮った人に、あとで「葉はどんな色をしていましたか?どんな感じの幹でしたか?」と質問しても答えられない人がほとんどでしょう。
そうではなく、何を聞かれてもスラスラ答えられるくらいじっくり目に焼き付けながら撮影することが大事だと思います。
そこで現在僕が試みているのは「カメラを持たない勉強会」です。」

フク:「なんですかそれは?」

佐藤さん:「持っていくのはカメラではなく、スケッチブックなんです。要するに絵を描くわけですが、こうすることで描こうとするものを紙面のどこに入れようかと一生懸命考えたり、被写体の大きさや手触りなどを見たりしますよね?
それはつまり画面構成であり、被写体の観察をしていることになるのです。カメラはシャッターを切っておしまいなので、被写体を観察する行為が希薄になります。
しっかり観察し、考えながら描く経験を写真に反映させようという試みです。」

フク:「なるほど。それは面白いですね。」

佐藤さん:「ちゃんと見なくてはそこから何かを感じ取ることは出来ませんし、感じられないと表現はできません。
風景を見て綺麗と感じたのだったら、そこをもう少し追求することで自分が何に対して綺麗と感じたのかを見つけることが出来るはずです。
それがその風景の中のポイント、つまり表現のポイントになるわけです。
ですから写真教室での撮影実習でも「まずはカメラを構えちゃ駄目だよ。いいなと思ったところがあったら、一度観察してみよう。」と指導しています。
観察して表現のポイントを絞り込むことで、構図はもとより使用する機材も決まってくるのです。」

フク:「構図や機材選びの方法は、自分の中から生まれてくるものなんですね。」

佐藤さん:「そうです。被写体を観察してそれを追及することで勝手に出てくるものです。
ですので構図を教えるのではなく、どうやってその構図に至るのか、という考え方を指導すべきだと思います。」

フク:「それは撮影だけではなくて、作品仕上げというプリントの段階でも同じことが言える気がしますね?」

Sk4

佐藤さん:「それはもちろんです。プリンターだって様々な種類のものがあります。まして紙ということになったらもっと選択の幅が広がります。
和紙まで入れたら膨大な種類です。そうしたたくさんの選択肢があるにも関わらず、今はお店に行くと光沢紙ばかりが多いのは少し気になりますね。」

フク:「それはおっしゃる通りですね。」

佐藤さん:「光沢紙は確かに階調性は素晴らしいと思いますが、僕に言わせると出過ぎです。これは僕の持論ですが、いかにして写さないかが重要だと思っています。
それはあまり写っていない写真の方が人に対して訴えかけるものが強いからです。
しゃべりすぎる人よりも寡黙な人の方が言葉の印象が強いのと同じです。僕なんかしゃべりすぎるからなかなか訴えかけられないんだけど(笑)。」

フク:「確かに、、、。!!いやいや何言ってるんですか(笑)。」

Sk2

佐藤さん:「そういう意味で僕は作品づくりの際に使う用紙はマット系が多いです。特に和紙とフォトマットを使い分けています。少し抑え気味のプリント表現が自分の作品とよく合っています。
もちろんこれは僕の作品の場合です。みなさんが用紙を選ぶ基準は、自分の写真を観察することで自然と決まってくると思います。
インクジェットプリントでは紙のそれぞれの主張を生かしつつ作品を仕上げることが大切です。インクジェットプリンターには白インクがありません。写真のハイライトは用紙の白色になります。
つまりインクジェットプリントは相対的な色しか表現できません。極端に言うと「それっぽい」色しか表現できないんです。
ですから作品としての写真の場合、そのプリントの色彩は自分の抱いているイメージと近ければいいわけで、厳密に一致させる必要はないと思っています。
紙の持っている力として紙白があり、微妙なテクスチャがあるわけですから、それが自分の好ましいと思う方向に導いてくれれば良いと思います。
作品と用紙も出会いです。肩の力を抜いて出て来たプリントを楽しむといいのではないでしょうか。」

・・・いかがだったでしょうか?

フク的にも、なるほどー面白いなーと思ったのが、スケッチブック構図勉強会のお話。

確かに、いいな!と思った瞬間や情景に出会ったら真っ先にカメラを構えがちです。あとあとその写真の被写体についてか聞かれると、例えばそこに何人人がいて、それぞれどんな表情をしていてとか、何本木が立っていて、どんな風が吹いていたとかって、自分の目や頭の中には残っている記憶は薄く、写真データを見てみないと思い出せなかったりしますよね。撮る時に自分にしっかり焼き付けておかないと、見る人に自分が何を感じたかは作品を通じても伝わらないのかもしれません。

それはプリントに関しても然りですよね。

佐藤さんが「日本では写真の価値が低い。伝統工芸品と同じように作品に作り手の“何か”を感じられるようにし、作品として売れるようにならなければならない。」と仰っていた言葉も印象的で、そういった文化・環境みたいなものをつくる手助けみたいな事は、地道にも我々エプソンとしても行っていきたいなーなんて感じた時間でした。写真家さんや写真に関連する仕事に携わっている方、また写真愛好家の皆さまで一緒になって、少しずつでも盛り上げていきたいものですね。

それではまた、宜しくお願い致します。

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