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« 用紙プロファイルでプリントしていますか? | メイン | 真夏のポートレートまつり「ポートレート専科」開催! »

2012年07月31日 | Posted by フク

フォトグラファーズレポート2012 ~茂手木秀行さん~

みなさんこんにちは、フクです。

早いもので7月も終わり・・・最近一日一日の時間の経つのが非常に早く感じます。我々プリンターメーカーも年末へ向けてそろそろ多忙さも増してきます。。ホント、時間が止まって欲しいくらいです。。時間を止める、まぁ現実的には無理な話ですが、自分のいる場所・その瞬間をおさめる、記録する、作品にすることができる唯一の表現方法が写真なのかもしれません!?

なんて、唐突にカッコいいことを言ってみました!?僕には似合わない発言ですが、そんなお話も伺えた、フォトグラファーズレポート三回目、茂手木秀行さんとの対談の様子をご紹介します。

<茂手木秀行(もてぎひでゆき)さんプロフィール>

1962年 東京生まれ

日本大学藝術学部写真学科卒業後、出版社マガジンハウスに勤務。2010年独立

個展 : 「トーキョー湾岸」「道の行方」「RM California」「海に名前をつけるとき」「海に名前をつけるときD」「沈まぬ空に眠るとき」「空のかけら」

イベントプロデュース : 「Hello!Monochrome」

Mtgsakuhin

▲某ブランドの広告にも使用されたという茂手木さんの作品。

~デジタルへのきっかけ~

フク:「それでは宜しくお願いします!茂手木さんといえば、かなり早い段階からデジタルをはじめられていますよね?」

茂手木さん:「はじめたのは確かに早い段階からでした。だいたい1990年くらい。時はバブルの残り香が(笑)する頃でした。僕は1986年にマガジンハウスに入社したのですが、90年当時会社の機材にMacとスキャナとPhotoshopが導入されたんです。でも導入したはいいんですが、当時はフィルムで写真を撮っていましたので、レイアウトなどはみんな手作業。暗室に入ってトレーサーでトレースしていた時代だったのです。それらの機材は埃をかぶった状態で、誰も使っていませんでした。」

Motegi2 茂手木さん:「そこで僕がなんか面白そうだからやってみるべってことになったのがデジタルの始まりです。たまたま後輩でその辺が少しわかるというのがいたので、一緒にいじりはじめました。でも最初はほんとひどかったですよ。電源の入れ方は分かる、アプリケーションの立ち上げ方もわかる、でもだれもシステム終了の仕方がわからなかったんです。みんなで大騒ぎしたあげくコンセントを抜いちゃったりして(笑)。当時のデジタルは写真は今では考えられないほど面倒でした。たとえばデジタルカメラはほとんどありませんでしたので、フィルムカメラで撮った写真を業者にスキャンしてもらって、それをPhotoshopに取り込んで画像加工していました。そして当時はPhotoshop上の画像データを出力する方法がなかったので、今度はデータを表示させている状態のCRT(ブラウン管ディスプレー)を撮影していたんです。いったいどれだけ手間がかかるんだって状態。CRTを撮影すると走査線が必ず写り込んでしまうのですが、当時はそれが面白いということで、そのまま連載小説などのイメージカットに使っていました。当時はポスタリゼーション(※1)やソラリゼーション(※2)といった写真に施す特殊効果のひとつとしてデジタルを使っていたのです。」

フク:「コンセント抜いちゃダメですよ、、メーカー泣かせですね(苦笑)。それじゃぁ、デジタルを勉強しようというのではなくて、好奇心みたいなところから入ったんですね?」

茂手木さん:「そうですね。僕は【写真は科学であり、時代の最先端であるべきだ】という思いがありますので、常に新しいものを取り込んでいきたいという気持ちが原動力でした。96年の終わりくらいから紙焼きからの入稿形態からデータによる入稿に切り替えはじめる中でカラーマネイジメントをしっかり学び、ある程度確実に自分で色をコントロールできるようになったのは99年くらいです。」

フク:「【写真は科学であり時代の最先端であるべき】とは?どういうことでしょう?」

茂手木さん:「僕にとって写真を撮る理由は「探求」の一言しかありません。それは学術的な科学ではなく科学少年的な科学に近いかもしれない・・・。写真というものが持っている機能は時間を記録し、精彩に見せる、また時間を止めたり積算するというものです。これは人間が持っていない「目の拡大機能」であると思っています。僕はその拡大機能に対する「探求」こそが科学だと考えてます。」

茂手木さん:「探求というのは人間の精神的な面だけで稼働するリビドーのひとつで、人間の三大欲求の次にくる4番目の欲求だと思うんです。三大欲求というのは、生命を維持する、子孫を残す、休息をとるという次につながる目的があるんですけど、この4番目の「探求」っていうのは探求したいっていう以上に目的がないんですよ。精神的な面だけでのリビドーであってそこが人間の面白さだと思うんですね。僕の場合探求していくリビドーは写真という技術であり、それを探求するにあたって自分自身を被験者にしているんですね。」

フク:「根底にある部分はだいぶ人間臭い部分なんですねぇ~」

茂手木さん:「そうそう。ですから僕も仕事でいろんな写真を撮っていますが、自分がライフワークとして撮っている写真はまず被写体性がない。そして長時間露光やごく短時間の撮影することによって写真の中における時間の混在を常に目指しています。人間の目では捉えられないものを、物理的に現場に自分が立つということによって、その中に写し出される自分が何を欲しているのか何を感じているのかを確認しているんです。」

茂手木さん:「考えるといろいろな写真は撮ってはいるものの、それは結局自分の記念写真なんです。ですからすごくへんな話ですけど、僕はみんなに作品を見てもらいたいとは思いますが、みんなからいいと言われなくてもいいと思っているのです。あくまでも「探求」が目的なので、一番大事なのは「茂手木の作品である」ということが分かってもらえる、つまり探求の積み重ねである自分のアイデンティティを提示することなんです。」

~エプソンのプリンターについて~

フク:「これまでデジタルに関わっていく中でじつにいろいろなプリンターを使われてきたと思いますが、現在エプソンから出ているPX-5Vはその中でどう見ていらっしゃいますか?」

茂手木さん:「PX-5800は非常にいいプリンターだったんですよ。ブルータスやポパイの時代に画像処理で黒人を作り出したりしていたのでよくわかるんだけど、PX-5VやPX-5002は東洋人の人肌がマゼンタ掛かってしまう傾向があるかなって感じますね。でもあれくらいの設定をしておかないとヒスパニックと黒人の差が出ないんだよね?設計思想はよくわかります。プリンタドライバーでその色を出すには問題ないと思うんですよ。ただプロファイルに対するリニアリティ(※3)が失われている状態だから、それはまずいかなと思います。ICCプロファイルで出す分にはエプソンがいい悪いではなくて、そのまま出してほしいなと。でも、エプソンのプリンターのいいところは、対応する紙に魅力的なものが多いことだね。ウルトラスムースとベルベットファインアートペーパーってほんといい紙だよ。それに輪をかけてこんどはフレスコジクレーだからね!」

茂手木さん:「個人的にはウルトラスムースが好みかな。ベルベットファインアートペーパーの方がリニアリティが高いんだけど、エンボスがついちゃっているのであまり小さいサイズは向かない気がするんです。この紙がすごくいいなって思えるのはA2サイズを超えてくる作品かなと思います。」

フク:「それは観賞距離の問題ですか?」

茂手木さん:「そのとおり。エンボスのサイズが生産時に決っているから、そこにどんな画像かで印象が変わります。例えばなだらかなトーンの空が写っている写真の場合、A4くらいの作品だとエンボスがとても大きく見えてしまって、模様のように見えてしまいます。なだらかな空を表現したいはずなのにコントロールできない陰影になってしまうのです。デジタルのメリットは100%データ上でコントロールできることじゃないですか?それを紙を選ぶ段階で捨ててしまうことに僕は疑問を覚えるんです。ですから僕はあまり和紙系の紙は普段使いませんし、使う場合でもB0くらいのサイズからかなと思ってます。どういう紙を使うかは大きさとの相関であって、エンボスだったり紙のテクスチャだったりが可視範囲の中から十分遠いもの、それが絵柄にならない大きさにならないと僕は使えないと思います。」

フク:「フレスコジクレーはどうですか?」

茂手木さん:「あれもすばらしい紙だよね。タイプSとタイプRがあってタイプRにしてもそんなにエンボスが強くなくて、でも僕の好みから言うとA2くらいからがちょうどいいかな?A2以下はタイプS。すごく立体感が出るのと、シャドウのつぶれは早いんだけど、つぶれる手前の部分のディティールは非常に豊かですね。あと最大の魅力は耐光性に優れているところだね。あと、漆喰というジャパンオリジナルってところもすばらしいよね。個人的に機材に関しては国粋主義なので(笑)、すべていい面を揃えてる紙だと思います。」

Motegi3 茂手木さん:「今年のCP+で、この紙をつくっているトクヤマの出展ブースで僕も女性モデルを撮った作品を一点を飾りましたが、非常に綺麗なディティールと立体感でした。その作品は今あるのですが、すごいでしょ?」

フク:「CP+で僕も見ましたよ!確かにすごいですねー。そこに本人がいるような立体感・・・ドキっとしますね。」

茂手木さん:「まぁちょっと現物よりはおおきいけどね(笑)。これまで印画紙だと例えば無光沢だと黒がしまらなかったじゃないですか?インクジェット用のマット系の紙は黒は締まりつつ、色域は狭いといいながらもこれだけ描写してくれれば十分なんですよ。」

フク:「確かにギリギリのところで粘って頑張ってシャドウ部ディティールなんかも表現してますもんね!」

茂手木さん:「うん。モニターで見るとつぶれて見えているところもギリギリ出してきているんだよね。レベル値で1と2の差をちゃんと出しているんだよね。こうした紙が選べることってデジタルのほんとすばらしいところですよ。『Hello!Monochrome』でも、一番最初に何故デジタルがいいかっていったのは紙が選べることだったし。」

~『Hello!Monochrome』について~

フク:「『HelloMonochrome!』といえば2007年から茂手木さんが監修してくださったイベントですが、この企画、写真展とワークショップとパーティーが混ざった一口では言いあらわせないイベントだったようですね。」

茂手木さん:「たしかにそうだよね(笑)。このイベントは今まで3回開催してきましたが、そもそものきっかけはPX-5500が出たことでした。それ以前は、フィルムの方がまだクオリティが高くて、デジタルはダメだよねって言われていた時代ですが、僕は既にデジタルを体得していましたので、既にPM-4000PXとかPM-3700Cあたりからカラー写真に関してはフィルム以上のクオリティだって実感があったんです。」

茂手木さん:「でも、モノクロに関してはしっかりと単一の色相のモノクロームがでないというところに不満があったわけです。それが2005年にPX-5500が出て、エプソンさんが主催した「MAXART DAY」というイベントに参加させてもらって、「モノクロすごくよく出るじゃん!」ってことに気がついたんです。これがきっかけとなって、『Hello!Monochrome』という企画が生まれたんです。仕掛けとしてはカメラメーカーの写真ギャラリーの館長クラスの人にみんな来てもらいまして、「どう?わかる?」ってところからはじめたわけですが、だれも銀塩との差はわからないよねって結果になりましたね!」

フク:「それが2007年の第一回ですね。このイベントは写真展というよりはDJを呼んだりとか、写真以外のいろいろな要素を複合させたイベントになってましたよね?」

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▲第一回目の『Hello!Monochrome』の様子

茂手木さん:「そうだね。写真、特にモノクロというのは写真愛好家は集まりますけど、それ以外の人がなかなか集りにくいメディアです。そこで原宿にあったヤマハさんの施設で「exrelm」といういろいろなアーティストを呼んでパーティーとかをする会場を使わせてもらうことにし、パーティー的な要素を入れてみました。外側に面した大きい窓にもプロジェクションして、道行く人も見られるようにしたりといった試みも行ないました。あとはモデルの女の子達にD2xとWT2を持たせて写真を撮らせて、それをAirMac経由で集めて、それをPX-5500でモノクロプリントをしてお客さんに渡すみたいな仕掛けをやってみました。・・・今思い返すと結構てんこ盛りの企画でした(笑)。」

フク:「そのあと継続的に2008年、2009年と続きますが?」

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▲第二回目の『Hello!Monochrome』の様子

茂手木さん:「第一回はデジタルのモノクロ写真は「フィルム写真と見分けがつかないよね?」という部分を伝えたかったのですが、二回目は「本当に銀塩のモノクロと期しているのか、それとも御しているのか」の検証になっていき、印画紙のプリントも一緒に飾るようにしたり、PX-20000で超大判の作品を出してみたり。そして三回目では「フィルムを否定するよりもデジタルの良さを引き出そうぜ」というように回を追うごとにイベントの主旨が発展していくような流れで行ないました。二回目以降は場所を横浜のZAIMに移して、パーティー的な要素はなくし、暗室を使わせてもらって、実際に手を動かして体験を行なったり、セミナーを開いてデジタル、フィルムという垣根を超えてモノクロを楽しもうというイベントになっていきました。」

フク:「パーティー的な要素は抑えても、イベント的な仕掛けは随所に散らしていったんですね?」

茂手木さん:「ええ。単純な展示ではなくて、少しイベント色を出そうと思って仕掛けました。たしか第二回目の時はプロジェクションを使ってみんなの作品を大きくして投影する仕掛けをつくりました。あれはたしか1週20分くらいのスライドショーにして、それを繰り返し投影していたのですが、3時間くらいずっと見入っているお客さんがいたりしましたね。」

茂手木さん:「また三回目では、パントマイムのパフォーマーを呼びました。真っ白な壁面の会場にモノクロの写真を展示していて、中にパントマイムの人が全身白塗りにしてもらって立っていてもらったんです。一見するとマネキン人形で、お客さんは「なんでこんなところにマネキン?」と思ってるところで動き出すみたいな(笑)。またあのようなイベントを通して写真愛好家以外の人にモノクロや果ては写真全般の楽しみをアピールする場が継続的にできればすばらしいなと思っています。エプソンさん是非ご協力よろしくおねがいしますね!(笑)」

フク:「いやいやーたしかに大切な面白いイベントだと思います。最後になってインタビュー側に話をふられちゃいましたね、焦っちゃいましたよ(汗)。・・・社に戻って検討させて頂きます(汗汗)。」

(※1)ポスタリゼーション : 映像の階調を変更することで出来る表現。色数を減らすことでポスターのような表現をすることができる。
(※2)ソラリゼーション : 現像時に光を当てることでできる映像表現。モノクロ写真の場合白と黒が部分的に反転する効果。
(※3)リニアリティ : 入力信号に対して正確に比例していること。デジタル写真の場合におけるプリンターのリニアリティとは、画像データのもつ色か階調を再現する際の忠実性を主にあらわす。忠実性が正確であるほど「リニアリティが高い」と言いあらわされる。

いかがだったでしょうか?かなり長文になってしまいましたが、お楽しみ頂けたでしょうか?

それではまた、宜しくお願い致します。

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