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2019年03月07日 | Posted by ギャラリーチーム

エプサイト・神田開主写真展「視線をむすぶ」

こんにちは あっという間に2月も終わり3月になってしまいました。。毎年2月下旬はは写真に関わる業界ではカメラと写真映像の見本市である「CP +」を控え、全く落ち着かない時期でもあります。準備に追われるこの時期私たちの周囲は皆目が回る思いでいて、ブログの更新も伸び伸びになり大変失礼しました。会期後となりましたが、今回は2月16日から開催された神田開主さんの展覧会の様子を事後レポートとしてご紹介しますね。

20190215_▲今回の写真展「視線をむすぶ」のメインビジュアル。神田さんは静かに変わってゆく地元・群馬県の景色に眼差しを向け、その姿を写真に撮り続けています。

神田さんの作品を拝見し、最初に感じたことはとにかく「落ち着いている」ということ。写真の中に定着された一つ一つの景色が端正な気配を纏い、淡々とその場に存在しているような印象を受けます。神田さんの作品が醸し出すこの「落ち着き」の秘密を少しでも知りたく、お話を伺いました。

神田さん:写真は20歳の時に専門学校に通うになってから本格的に始めました。以前から何かを作りたいという漠然とした思いがあり絵画を勉強していた時期もありますが、写真は一人で出来るし、それから今日まで12年間続けられたので、自分に合っていたのだと思っています。

神田さんは現在32歳。一般的に見て写真家のキャリアとしてはまだまだこれから、という年齢ですが、すでにこれまで2冊の写真集を出版し個展は5回開催しています。地元である北関東の地を歩き、コツコツと写真に収めるのが神田さんの作品制作の基本とのこと。その作品にはすでに確固たる独自世界が築かれているようにも見えます。

神田さん:自分にとって写真は何かを主張するものではなく、何かを確かなものにしていく手段なのだと思っています。 カメラは目の延長で、自分が見たものを写真の中で定着させ、あらためて見返すことで色んなことが浮き上がってくる、自分にとって写真は世の中の物を見たり感じたりする際のクッション材のようなものです。

あまりに近すぎて意識を向けないうちに少しづつ変化していく周囲の景色。特別ドラマチックな事があるわけではないけれど、同じ景色を幾度も繰り返し見て、積み重ねた上で感じた事を写真を通じて確かな形にするという神田さん。その忍耐強いまでの眼差しこそ、神田さん独自の落ち着いた作品の気配を形作っているのかもしれません。

神田さん:目立たない作品だと思いますが、エプサイトの選考委員の方々が自分の作品制作の背後まで察して、評価してくれたのが嬉しかったです。

P2220921▲神田さんの展覧会の様子。実にきちんとした佇まいです。横位置の写真ですが、額を縦に使い上下に余白を広くとる形でマットに収まっています。これは、神田さん曰く「どこまでも広がって続く北関東の景色に一つ一つ区切りをつける意味でこのような仕立てにした」とのこと。なるほど。確かに、的確な効果を生み出しているように思います。

 さて話は変わり、神田さんの作品は美しいモノクロのプリントも見どころの一つです。こればかりは実物をご覧いただかないことにはお伝えにくいのですが、精緻でとても美しいトーンです。
 
神田さん:フィルムで撮影し、それをスキャンしてインクジェットプリントというフローが多いです。
モノクロは、自分で最初から最後まで自分で関わることができるので好きです。現像もお店には頼まず、自分のネガのデータをずっと作り続けています。
用紙はハーマンのグロスバライタを気に入って使っていたのですが、販売中止になって、その時に慌てて買い占めました。

撮影はシンプルな機構のカメラでオートの設定は使わず、1/500秒のF11をベースにコツコツと自分のネガのデータをとって現像・スキャン・プリントする。神田さんは特別なことをするわけではなく、撮影からプリントに至るまで全てにおいて写真の基本となることをシンプルに積み重ねているようです。「フィルムにせよデジタルにせよ、自分で作って自分の目で確かめて、ということをこれからも続けていきたい」と語る神田さん、これは今の時代、逆に出来る人が少ない事なのかもしれません。

最後に神田さんに今後の展望についてお聞きしました。

神田さん:今年は清澄白河にあるTAPギャラリーに1年間の期間限定メンバーとして参加し、数回個展を開く予定です。このシリーズは実はすでに何百枚も作品があって、今回エプサイトに飾った作品以外を展示するつもりで準備を進めます。写真展は自分を振り返る場所、限られた期間にギャラリーに足を運んでくださる方に見てもらう作品だから、きちんと背筋を伸ばして取り組むべきことだと思いますし、提示した作品を見てくれた人と話をしてまた新たな制作につなげていく、というフローを続けていきたいと考えています。

神田さんの今後の活躍にもぜひみなさんご注目くださいね。

さて今回の神田さんの会期で昨年11月から始まった2018年度・エプサイト下期公募展の7会期、全てが終了しました。開催されたこの7つの展覧会の中から最も優れた展覧会を「第3回 epSITE Exhibition Award」として選考し、発表します! どの作品もひとつひとつ個性的で豊かな可能性を秘めたものばかりで、この場所で写真展を開催してくださった作家の皆様お一人お一人に心から熱く熱く、感謝の言葉を申し上げたいと思います。発表は春以降、エプサイトのwebページ内でお伝えする予定です。こちらにもぜひご注目ください。

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2019年02月07日 | Posted by ギャラリーチーム

エプサイト 柴田慶子写真展「聞き写し、 春日」

こんにちは 2月に入り、日々確実に日が長くなっているのを実感します。春はもうすぐ、寒さももう少しの辛抱ですね。
さて、エプサイトでは先週2月1日より、柴田慶子さんの写真展を開催しております。本日はその様子をご紹介します。

まずは柴田慶子さんのご紹介を。。。柴田さんは労働問題を扱う編集者として仕事をしながら、写真作家としての活動を続けています。写真展は2008年のコニカミノルタギャラリーでの個展開催以来、実に10年ぶりとのこと。タイトルにある「春日」とは、岐阜県揖斐川郡にあった村の名称です。ここは滋賀県との県境に近く、知る人ぞ知る山深い天空の里。柴田さんは20年以上この地に通い、春日にまつわるさまざまな話を地元の古老に聞き、記録を続けています。

春日村は2006年揖斐郡の他の町村と合併し、今の町名は揖斐川町です。調べますと、この土地の歴史はとても古く、古代史上最大の内乱となる672年の「壬申の乱」、また、1600年の「関ケ原の戦い」といった歴史的な戦いの舞台が近いことから、数々の落人伝説も残されています。

古から様々な話が伝わる春日ですが、最初に柴田さんが春日を写真を撮り始めたきっかけについてお聞きしました。

柴田さん:元々地理や地形に興味があって、地図を見るのが割と好きなんです。「この地図の先はどうなっているんだろう」ということが気になって出かけることもあります。それと、実は白洲正子さんが好きで、以前からよく岐阜や滋賀、北陸あたりには出かけていました。春日に初めて行ったのはもう20年以上前になります。バスで地元の人と乗り合わせてたまたま言葉を交わしたら、その話がとても面白くて。もっといろいろな方の話を聞いて、この地を記録したいと思うようになりました。

20190201__2▲柴田さんの作品は春日の景色や村の人たちの昔語りを聞いて感じたイメージを、何と言いますか、そのまま紙の上に「念写」しているような雰囲気です。もちろん写真は今現在の春日を写しているのですが、古写真のような佇まいも感じます。この独特な表現は一体どうやって生まれたのでしょう。

柴田さん:今回の作品は、デジタルで撮ったものも、フィルムで撮ったものもあります。フィルムで撮ったものの中には、スキャンして一度和紙にプリントしたものを、再スキャンして再び紙にプリントしたものもあります。簡単に言うとそのほうが質感が良いと思ったからです。
今、目の前に見ている景色には過去からこの瞬間に至るまで脈々と繋がってきた時間が含まれています。そういった「時間の積層」を写真にしてみたいのです。村の人たちが語る物語を加味しながら、過去の時間を写真の中に閉じ込めてみたい、そういう表現を写真で極めてみたいと思っています。

P2050867▲ギャラリー内の様子。今回は写真作品と映像作品の組み合わせで、構成されています。 映像では一つの写真から次のイメージに切り替わるときに、二つの写真が重なり合って表現されるのですが、その様子がまるで人の記憶の中を再現しているようにも思えます。

Img_7525▲中央のテーブルには、春日の古老たちから実際に聞いたさまざまな話が写真と共にまとめられてます。歴史や地域の自然や暮らしのことなど、その話は多岐にわたり、中には関ケ原の戦いで敗れた大名・小西行長がこの地に逃れ密告で捉えられた際、呪いの言葉を残したという話も、、、

柴田さん:今回の写真展で、初めて空間構成も全部自分でやってみました。ギャラリーを巡って色々な仕立て方があるのも知って。写真展はとにかく自由にしていいんだということを学びました。

「その場所が積み上げてきた時間の積層を写真に写したい」と語る柴田さん。写真とは何かを伝えるためのツールですが、目の前の「今」を切り取るだけではなく、記憶の中のイメージを再現したり、過去の時を写真に留めるという柴田さんの試みを目の当たりにし、写真表現の奥深さをあらためて感じました。写真に出来ることは、まだまだ数多くあるのですね。

柴田さんの展覧会は2月14日(木)の14:00まで。日曜は休館ですが土曜日と月曜の祝日は営業しています。柴田さんも在廊予定です。ぜひギャラリーで柴田さんが写真に閉じ込めた春日の物語を味わってください。皆様のご来場を心よりお待ちしております。

エプサイト 柴田慶子写真展「聞き写し、春日」

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2019年01月25日 | Posted by ギャラリーチーム

エプサイト・芦谷淳写真展 「~余白~」

こんにちは 2019年、いよいよ「平成」も残り僅かとなりましたね。エプサイトでは先週1月18日より芦谷淳さんの写真展「~余白~」を開催しております。今日はその様子をご紹介しますね。

まずは作家の芦谷淳さんについて。。。 芦谷さんはフリーランスのフォトグラファーとしての活動と並行し、「モノクロランドスケープ」と「山岳」をテーマに写真作家として活動を行っています。実はエプサイトで展覧会を開催されるのは今回で2回目。2015年に開催された「NEW FARMSCAPES」では「自然と人工物の融合」をテーマに、農場を被写体とし、画面構成の美しい洗練されたモノクロ作品を展示されました。

今回の作品の舞台は北海道です。雄大な自然を有する北海道は日本を代表する農業大国ですが、他の日本国内の地域と同じように、今、離農と過疎化が進んでいると言われています。
芦谷さんは、人が去り廃屋となった住居や、かつて農作業のために使われていた小屋や酪農用サイロなど、道内各地に点在するこういった開拓の歴史を物語る建物を、スクエアフォーマットの中に納めました。

A1▲芦谷さんが道北・幌加内町にて最初に撮影した1枚。この建物に出会ったときに芦谷さんは(被写体として)なんて美人なんだろうと、感じたそうです。

芦谷さん:元々北海道が好きで90年代から何度も来ています。その頃木造の建物や作業小屋は当たり前にそこら中にあって、当時そういった建物に向けてシャッターを切ることはありませんでした。ところが2000年代以降こういった建物は徐々に見かけなくなりました。今ではめったに見られず、車で走りながら1~2時間探しても、まったく出会わないこともあります。自然の厳しさゆえに、建物は耐用年数が過ぎて人が住まなくなったらすぐに傷んでしまうのです。「北海道」というと雄大な美しい風景をまずは思い浮かべますが、こういう実態もあるんです。

建物に向き合い撮影しているときは、様々な思いが浮かんでくると芦谷さんは語ります。

芦谷さん:ここにどんな家族が暮らしていたのか、ここから学校に通っていた子もいるのか、極寒の地に入植して、何代ここで人が過ごしてきただろうか、とか、、、 家屋がかつて人と共に過ごした時間や歴史を思わずにはいられないですね。

Img_7505_3▲作品総点数はなんと397点。北海道産の稲の品種のひとつ「きらら397」にちなんで決められたとのことです。足掛け4年、ひとつひとつの建物に向き合い緻密な記録を続けてきた芦谷さんに頭が下がる思いです。プリントはご自宅で所有される大判プリンター・エプソンのPX-H9000で制作されています。

芦谷さんの今回の作品について、エプサイト公募展の選考に携わっている写真家の北島敬三さんとフォトキュレーターの小高美穂さんは以下のようにコメントを残しています。一部抜粋し、ここに引用させていただきます。

北島敬三さん:それぞれの写真は、北海道開拓に携わった人々の個別な物語を潜在させ、交換不可能な単独性を帯びている。このドライな記録写真を見る者がその想像力を向けるべき先は、これらの小屋に暮らした人々のあり様と北海道という土地の歴史なのだと思わずにはいられなかった。

小高美穂さん:開拓の歴史がこれらの風景から垣間見える。こうした歴史的な記録はやはり写真というメディアだからこそ留めておけるもので、その手段としてできるだけ主観を排したスタイルを取ったことは、正しい選択だったように思われる。考現学的な面白さに加えて、写真としての魅力がある。

この展覧会を通じて、芦谷さんが伝えたかったことについてお聞きしました。

芦谷さん:一つ一つの家屋に歴史があったことを想像しながらご覧いただけると嬉しいです。作品を通じて考えるきっかけやヒントを作るのが写真家の仕事だと思っているので、なるべく客観的に、ドキュメンタリーとして成立させることを心に留めていました。

Img_7509▲ギャラリー内に掲示しているキャプション。赤い点で示されているのが建物の撮影地です。芦谷さんはこの赤い点が、いずれまた訪れたときに「余白」になっていないようにと願いを込めて、そのまま作品のタイトルとしました。

芦谷さん:今回の作品を作るうえで一番苦労したのは、被写体を探すことです。本当にどんどん無くなってきている。実は当初もっとタイポロジー的に建物の形でまとめる方向でも考えていたのですが、まずはとにかく遺っている建物を全て撮ろうと切り替えました。今撮っておかないと、無くなってしまうかもしれませんので。
あと、これだけ数があるのでデータの整理は大変でした。どこで撮ったか分からなくならないように。今はGPSとかありますが、結局GoogleMapやカーナビでポイントを付けたとしても、結局その情報を後で文字に起こすのが大変なので、その場で地図に書き込んでいくやり方が一番でした。

さて話は変わって、今回ギャラリー内では、今回の展示作品を一冊のブックにまとめた作品集も販売しております。

Img_7501▲ハードカバーで、ケースまでしっかりついた本格的な写真集。実はなんとエプソンの製本キット「かんたん手作りブック」で制作されています。

Img_7504▲「かんたん手作りブック」はプリントした作品をそのままカバーに挟んで綴じるだけ。ご自宅のプリンターで制作できます。 レイアウトもプリントも自由です。今回用紙はエレコムの両面マット紙を使用されています。それにしても、美しい仕上がりです。

芦谷さん:オンデマンドの印刷で作品集を作ったこともあるけど、レイアウトとか大変だった割に、最後の仕上がりがあまり納得いくものではありませんでした。注文して作るものは結局最後まで自分で出来ませんが、この製本キットのスタイルは紙も好きなものを使えるし、最初から最後まで全部自由に自分で出来るところが気に入っています。作品をそのまま綴じることができるので、手元に置いておけば、自分の作品の記録帳としても活用できます。ただ、エプソン純正で両面の写真品質の用紙があればなおいいですね。

子供の頃から写真に親しみ「仕事も写真、趣味も写真、全部写真」と語る芦谷さん、写真で出来る事を突き詰め、楽しんで取り組む姿勢には、いつも清々しさを感じます。
展覧会は31日(木)の14:00まで開催しております。ぜひ、ギャラリーで芦谷さんの作品をご堪能ください。皆様のご来場を心よりお待ちしております。

エプサイト 
芦谷淳写真展 「~余白~」

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