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« 良いプリント、悪いプリント | メイン | 2012年もご愛読ありがとうございました »

2012年12月27日 | Posted by フク

フォトグラファーズレポート2012 ~松平光弘さん~

みなさんこんにちは、フクです。

世の中はクリスマスも過ぎ、新年を迎えるモードが色濃くなって参りました。我々エプソンは明日が仕事納め。もう既に少々頭の中はおやすみモードに入りつつありますが・・・あと、1日、しっかり仕事をしたいと思います。

さて、今回のフォトグラファーズレポートは、前回の岡嶋さんとご一緒にEpsonNewPhotoForumでご登壇頂いた松平光弘さんにお話を伺って参りました。

松平さんのご職業は“プリンティングディレクター”。以前お話を伺った小島さん同様、作品を仕上げる“プリンター”というお仕事をされておりますので、作品を「撮る」方とは違った観点で、作品を「仕上げる」「創り上げる」という視点から語って頂きました。

~きっかけはイギリスのラボ~

フク:「プリンティングディレクターというお仕事は主に写真をプリントし作品として仕上げるお仕事ですよね?以前このフォトグラファーズレポートに同じ職種である小島勉さんが登場してくれましたが、松平さんのお仕事の内容も重なる部分があるのでしょうか?」

Mm1_2 松平さん:「そうですね。僕は自分のことを“プリンター”と呼ぶことが多いのですが、主な仕事として写真家の方、一般の方問わず写真をプリントして作品を納品するというものです。ポートフォリオ用に使用する写真から部屋に飾る用などプリントの用途も様々ですし、それこそプロ・アマはもちろん、部屋に写真を飾るという習慣は日本よりも海外の方が普及しているせいか日本人だけではなく海外の方の注文も少なくありません。また現在は写真だけではなく、大学の研究機関などの仕事で文化財をアーカイブするようなことも行っています。」

フク:「“プリンター”というお仕事と、文化財の復元となると、なんだかかけ離れているイメージがありますね。以前小島さんからも文化財の復元のお話は伺いましたが、どちらかというと“プリンター”というと、フィルムを印画紙にプリントする時の職人さん、というイメージの方が強くあるのですが…。

松平さん:「確かにこれまでの銀塩のプリンターが行っている仕事の領域とは違いますね。デジタルならではのプリンターの領域です。」

フク:「文化・歴史的な財産を守り続けていく為に、エプソンのプリンターが使われているなんてお話をこうやって直に伺えると、なんだかワクワク嬉しくなりますね!」

フク:「ところで松平さんはどういういきさつで写真に興味を持ち始めたのでしょう?」

松平さん:「写真が格好いいなぁと思うようになったのはやはり高校生の頃です。それ以前はまったく興味もなく、むしろ「写真」=「何かダサい」とか「暗い」といったイメージでした。高校に海外交換留学生の女の子が来ていまして、その子が写真を撮っていたのです。それを見ていてなんか格好いいなと…。それからイメージが180度変わり、少しずつ写真に興味を持ちはじめたんです。僕も少しまねてみて父親のヤシカという35mmのカメラを使ってみたのですが、古いせいか光線漏れしまして…。せっかく撮ったのにジャンジャン光が入ってきてしまって真っ白になってしまうんですよ。それで写真には興味はあるものの撮るのは、そこそこという状態でした。」

フク:「そこでプリンターを目指されたのですか?」

松平さん:「いや。プリンターというのも志があっての話ではなく、ほんとお恥ずかしいくらい、たいしたこと無いんですよ(笑)。きっかけはイギリスに行った時でした。特に何をするわけではなく、イギリスでちょっと過ごしてみようと思いまして、1999年にプラっと行ったのです。一応語学学校に登録してビザだけは取りましたが、正確に言うと語学留学でもなく何のプランも無い状態でした。」

~プリンティングディレクターの第一歩は2畳の事務所~

フク:「それもすごいですね。いきなり単身でイギリスなんて。」

Mm2 松平さん:「何とかなるだろーみたいな気持ちでした。しかし行った時に確か20万円くらいしか持って行かなかったんです。当時は僕の中では結構大金だったんですけど、、家を借りてちょっとご飯を食べたらあっという間にお金がなくなってしまう額ですよね?今思うとよくあれで入国できたなと思ってしまいます。格好つけている訳では無かったんですけど、地元の友達にはちょっとイギリスに行ってくるわと言って旅立った手前、お金がなくなったからといってすぐに帰るという訳にもいかないじゃないですか?(笑)そういうわけで働かないとまずいって思ったんです。」

松平さん:「この頃、どうせ仕事をするなら好きなことってことで写真関係の仕事を探していましたが、英語なんて高校卒業程度のレベルです。探してみてもホントなかなか見当たらなくて。ようやく見つけたところはロンドンのラボで、日本でいうところの堀内カラーを小規模にしたような現像所でした。とにかく背に腹は変えられぬということで、直接そこに飛び込み、試用期間をもうけて雇ってもらうことになりました。そこにはモノクロの現像プリントシステムとネガカラーの現像機、デジタルも当時ほんの少しありました。周りは外国人ばっかりで何を言っているかわからない状況、最初は現像があがってきたフィルムを切ってフィルムケースに入れる仕事からはじめました。あれは言葉がわからなくてもできましたからね(笑)。」

フク:「その時からデジタルを?」

松平さん:「いえいえ。当時僕はまったくデジタルはやっていませんでした。空いている時間にスタッフにネガを借りてプリントをしたり、いろいろな印画紙を使い分けたりしていましたね。このラボには2000年まで約2年間在籍し、それから帰国してTHE PRINTS※1に在籍しました。その後、独立してから本格的にデジタルをはじたんです。」

フク:「独立したタイミングでデジタルなんですね。」

松平さん:「そうです。2006年でしたが、はじめは実家の埼玉県川口市で、うちの父親は実家の下で町工場のようなものをやっていましたので、その一角を借りて2畳くらいのスペースにエプソンの大判プリンターPX-7500を入れてスタートしました。当時の事務所は本当に狭くて、プリンターだけで1畳もってかれてしまって(笑)。残りの1畳で作業をしていましたね。それと同時にアフロでアルバイトをやり、1年くらいして事務所を青山に移しました。家賃など結構高かったんですけどなんとかなるもので、そこで5年間くらいやりましたね。」

松平さん:「ところがその後に金融危機がありまして、うちは結構外国人のお客さんが多かったので、それまであった仕事が一気に無くなってしまったんです。しかも2011年の3月に震災があって…」

フク:「めまぐるしい展開ですね(汗)」

松平さん:「当時は本当にまずいと思いましたね。とりあえずアフロでのアルバイトをもう一度やろうかと思っていたところ、ここの社長が一緒にやろうよと言ってくださったのでなんとかなった訳ですが…。しかし今振り返るといい経験でした。それまでは自分のことしか見ていなかった部分があったのですけど、やはり人の役に立たないとって思うようになりました。」

フク:「こうやってさらっとお話を伺っていますが結構紆余曲折してらっしゃいますね…。幾度と危機を乗り越えられて!?」

松平さん:「紆余曲折ありながらも結局プリントをやり続けています(笑)。」

Mm3

▲松平さんのスタイルはスタンディングレタッチ!?物を取ったり移動したり、また作業に集中する為にも基本的には事務所では立ちっぱなしで作業をされるのが基本スタイルだそうです。

~大事なのはコンセプトとテーマ。デジタルプリントはあくまで技法のひとつ~

フク:「現在のお仕事は写真家をはじめとする作家の作品をプリントすることが多いと思いますが、写真データを預かってどのようにして仕上げていくんでしょうか?」

松平さん:「そうですね。これはニューフォトフォラームで岡嶋和幸さんとセミナーをさせていただいた時にも彼が話をしていましたが、僕の場合は作家の方と話をするところからはじまります。作家の人となりや考え方、気持ちを聞いて、それを踏まえて作業します。」

松平さん:「例えば空のコップがここにあって「水を一杯ください」って言った場合、水を注ぐ量はみんな違うと思います。それと一緒で「明るい雰囲気」といっても人によってその度合はまちまちです。それがどういう雰囲気なのかを解釈して作家と合わせていくことが僕の作業、しいては“プリンター”の仕事なのかなと思うのです。ですからデータをお預かりして、ただ仕上げるというのは、何となく出来上がるレベルのものしかできません。それは銀塩でプリントしている時からずっと変わらない方法です。」

フク:「作品を通して作家とコミュニケーションが重要になってくるんですね。話は少し戻りますが、それまでの銀塩から一気にデジタルというのは抵抗はなかったんでしょうか?」

松平さん:「技法は時代とともに変化していきますので、その技法に縛られていては新しいことはできません。ですので時代が求めている技法を選ぶということは、ごく自然で抵抗は感じませんでした。THE PRINTSに在籍していた頃からデジタルやインクジェットが主力になってくるだろうなって実感はありましたからね。また、デジタルになってもプリントを完成させていく上での基本的な考え方は一緒です。僕にとってデジタルやインクジェットプリンターは、引伸ばし機と一緒でプリントをつくるための技法であり道具です。プロセスこそ違えど同じことをやっているという意識でした。」

フク:「ずっと写真をやっていらっしゃる方の中には、銀塩とデジタルのインクジェットプリントでは、まだまだ銀塩の方がいいというイメージを持ってらっしゃる方も多いと思いますが?」

松平さん:「僕もはじめは銀塩写真のプリントからはじめました。またその他に幕末の頃の写真技術である「湿板写真」のプリントや、銀塩ではなくプラチナを使うプラチナプリントと呼ばれる技法などもやってきました。でも例えば湿板写真とプラチナプリントはどちらが美しいのかとか優れているのかとかって比べることはありませんよね?それは技法やメディアが異なるので比べられないのです。そうして見ていきますと今のインクジェットプリントと銀塩プリントというのはそれとまったく同様で、比較するための対象ではありません。もちろん画質などを比較することはできますが、私は少なくともそういう認識で銀塩プリントとデジタルプリントを見ています。ですのでどちらが優れているといった問題ではないんじゃないかなと思います。」

フク:「なるほどー。」

松平さん:「それを改めて認識したのは、今年の夏にプリントの勉強でニューヨークに行った時でした。現代美術家の杉本博司さん※2のスタジオにお伺いしたのですが、その際に現地のラボを紹介していただきました。そこはインクジェットプリントはもちろんライトジェットプリント(銀塩デジタルプリント)から銀塩プリントまであらゆるプリントをやっていて、そうそうたるアーティストの作品を手がけていたのですが、そこの“プリンター”の方と話をした時にちょうど先ほどの質問を僕もしたんです。「プリントの技法によって作品価値は変わるのか?」って。そうしたら、「大事なのはコンセプトで、写真の中に写っているものが重要だ」と言うんです。確かに言われてみればその通りで、日本ですとプリントに関しては技法にどうしても重点が置かれがちになります。写真は感性だけでなく、技術と共に進化しているという歴史があるからなのです。しかし実際大事なのは技法ではなく、写真作品を作る上でのコンセプトであり、そこから表現されるテーマなのです。」

フク:「海外ではプリントの技法は銀塩、インクジェットを含めそれらはあくまで成果物に対する過程のひとつだという考え方ですね。海外では日本国内よりファインアート系の用紙を使われる方が多い印象がありますが、用紙選びの方にもその考え方が浸透しているのでしょうか?」

松平さん:「あくまでも作品のためのひとつの道具という考え方はあります。それとプリント用紙の好みは国柄というのがあるような気がしますね。実際欧米の作家はマット紙を選ばれるケースが多いです。日本人は光沢紙を好みますよね。一概には言えませんが、ファインアートの世界で光沢紙を使うのは主に写真だけです。絵画やグラフィックの場合、キャンバスや水彩紙を使いますが、それは面質でいうとマットですよね。ハーネミューレのフォトラグやベルベッドファインアートペーパーとか。そういう背景があって海外では写真もマット紙が多いのかなと思います。」

フク:「ファインアートペーパーはイベントなどで実際使ってみて良さを実感していただけているようですが、同時にどのような写真に向いているのかという質問を受けることがあります。松平さんはそのあたりどのようにお考えでしょうか?」

Mm4 松平さん:「僕の場合、用紙を選ぶ時の基準は光沢紙にしています。それはエプソンでしたら写真用紙光沢やクリスピアになりますが、お客さんの作品の表現内容や好み、その用途(販売用・展示用など)によって、少しずつ絞り込んでいきます。ただ写真だから光沢系にしなければならないということはありません。むしろどんな写真でもファインアートペーパーにそれなりに合うと思います。自分で作品づくりをしている方にお勧めするのは、とにかく一度使ってみるということかなと思います。ファインアートペーパーの特性というのは厳密にはありますが、それを調べてからというよりまずは一度使って好きか嫌いか、自分のイメージとマッチするかといった直感的な部分を大切にした方がいいと思います。」

Mm5

フク:「用紙の特性を知ることも大事ですが、まずは使ってみて体感する。これはあたり前のようなことですが大事なことですね。」

松平さん:「これからどんどん他の用紙が出てきて多様性が広がると思いますから、自分の基準を持つ必要があると思います。」

※1:THE PRINTS:新宿区にあるモノクローム専門のラボ。主にゼラチン・シルバープリントの世界で活動中。http://www.theprints.jp

※2:杉本博司:1948年ー 東京とニューヨークを拠点とし活動している現代アーティスト。代表作「海景」「劇場」など。

いかがだったでしょうか?

松平さんとは年も近いせいか、ここには書けないようなざっくばらんなお話も色々させて頂きました~。ありがとうございました。

2013年も引き続き『フォトグラファーズレポート』を宜しくお願いします!

それではまた、宜しくお願い致します。

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