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2018年12月06日 | Posted by ギャラリーチーム

エプサイト・稲垣英孝写真展「RESURRECTION SPELL」

こんにちは 先週11月30日よりエプサイトでは稲垣英孝さんの写真展「RESURRECTION SPELL」を開催しています。今日はその様子をご紹介しますね。

1_▲稲垣さんの写真展DM。カメラを持って岩山を登る人の後ろ姿、テトラポットの並ぶ海岸線、作業着を着てカメラに眼差しを向ける人、etc...  一見何のつながりも持たない写真が隣り合う稲垣さんの作品。不思議な雰囲気です。

まず最初に稲垣英孝さんのご紹介を少々。高校時代に写真部に入部、大阪芸術大学で写真を専攻し在学中に学長賞を受賞、現在は東京に拠点を移し、業界紙の記者として仕事をしながら、作品の制作を続けています。写真をずっと撮り続けてはいたけど、「発表する」ということからは少し遠ざかっていたという稲垣さん。実は今回、初個展となるそうです。
スナップショットが不思議な組み合わせで並んでいる稲垣さんの作品ですが、まずは作品のコンセプトについてお聞きしました。

稲垣さん:ここ数年は特定の地域や特別なものを写さない、というコンセプトで写真を撮っています。写真は現実に存在するものを写すものですが、同じ写真でも、見る人によって全く解釈が違ったり、並べ方で意味合いが変わったりします。今回の作品は見てくれた人に解釈を委ねる、という事がテーマの一つになっています。

「RESURRECTION SPELL」というタイトルは直訳すると「復活の呪文」という意味。実はこの作品のタイトルは、あるゲームから着想を得たのだそう。

稲垣さん:ある昔のゲームに「復活の呪文」というものあります。これは中断したゲームを再開するときにを入れるパスワードなのですが、単なる文字の羅列で出来ています。一見意味を成さない文字の羅列に暗号のようなものが組み込まれていて、それが再スタートの鍵になるのです。写真にもそういった暗号的な要素があるんじゃないかと思っています。

不規則なものを組み合わせ並べた時に、何かが始まって様々な思いを想起させる、こうした稲垣さんの試みは写真展の中にどう落とし込まれていったのでしょう。

稲垣さん:写真は記号として並んでいるけど、見る人それぞれの解釈が入る。今回、写真の並べ方は最後の最後まで悩みました。それでようやくたどり着いたのが「音楽」というキーワード。自分の写真は音楽の楽譜のようなもので、見る人がそれを解釈して演奏する。「音楽」というキーワードを手掛かりに構成を考えることで、腑に落ちました。

Pc040659▲ギャラリー内の様子。確かに五線譜に音符が並んでいるかのようにも感じます。実はこの並べ方は、稲垣さんの記憶の中にある一番古い楽曲の音の並びを意識されている、とのことです。

さて、稲垣さんの作品のもう一つの見どころは1枚1枚のプリント。ハッセルブラッド500CMにデジタルバックという装備で撮影された作品は、中判ならではの被写界深度と画質で、優しいけど芯がある、何とも言えず美しい描写です。

稲垣さん:フィルムの頃からカメラは中判を使っていたのでデジタルでも自然とこの装備になりました。作品は全てRAWで撮影しています。自分のプリントはシャドーを起点にしていて、影は起こしてつぶれないようにするのが基本です。ハイライトが飛びすぎた時はそこだけ抑えます。色は派手にしないように心がけています。 

画面でお伝えできないのが残念ですが、フィルムとは似ているけど違う、デジタルとも違う、「第3のトーン」という言葉が似合うようなプリントです。

Img_7180▲ギャラリー内の一部。ちなみにこの辺りは稲垣さんが好きなゴッホの作品にかけた並び方になっているとのこと。みなさんお分かりになるでしょうか。。。「解釈は見る人に委ねる」と稲垣さんはおっしゃいますが、作家に意図を直接聞いてみるのも、もちろんオッケーです。稲垣さんも快く解説してくださいます。

最後に稲垣さんに写真展をやってみての感想と今後の展望を伺いました。

稲垣さん:今回初めての展示ですが、空間を使って作品を見せるというのはとても面白いですね。ブックはブックで面白いですけど、写真は展示で見せる価値があるということが良く分かりました。他の展覧会をまわっても、自分が学生だった頃より、今のほうが凝った展示が多いですよね。見る側に刺激を与える展示とは何だろうと悩んだことも今後の糧になるかと思います。
次は特定の場所に絞った作品を作ってみたいです。短い時間で作ってみたいこともあり、次作のヒントをこの個展で何か得られれば、とも思っています。

稲垣さんの展覧会は今月13日の14:00まで。ぜひギャラリーで、稲垣さんの作品世界を味わってください。皆様のご来場を心よりお待ちしております。

エプサイト 稲垣英孝写真展 「RESURRECTION SPELL」 


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2018年11月22日 | Posted by ギャラリーチーム

エプサイト・嶋田聡史写真展「気鋭の排他」

こんにちは 朝晩冷え込むようになりましたね。芸術の秋が深まっていきますね。
さて、エプサイトでは11月15日(金)より、嶋田聡史さんの写真展「気鋭の排他」を開催しております。2018年度下期公募展・第2弾の展覧会となります。

嶋田さんの今回の作品は、ビルが主役です。東京都内には意匠を凝らした新旧数多くのビルが存在しますが、その表情豊かなテクスチャーを端正なモノクロ作品で表しています。

20181116__3▲展覧会のメインビジュアルとなったこの作品は、東京・お台場にあるフジテレビの本社ビルとのこと。言われてみれば、、、あの丸いところでしょうか。。。

嶋田さんは写真を独学で始められて3年、美容師としての仕事と並行して写真作品を制作しています。エプサイトも公募展が始まって10年が経ちますが、美容師を職業とする作家さんをお迎えするのは初めてではないでしょうか。嶋田さんに写真を始められたきっかけをお聞きしました。

嶋田さん:ずっと美容師として仕事をしていますが、この仕事は何よりもお客様の要望に応えることが第一です。もちろん自分の提案やセンスを入れることもありますが、完全に入れることは出来ません。自分の感性やセンスを存分に表現できるものを探していて、始めたのが写真です。
元々ファッションが好きなので、仕事とリンクするような形で普段はファッションフォトを多く撮っています。モデルのヘアセットやメイクはもちろん自分で仕上げ、衣装はスタイリストの友人を交える場合と、自分で全て手掛ける場合と様々です。

モデルを使ったファッションフォトの撮影が多い嶋田さんですが、ビルの作品はどういうきっかけから生まれたのでしょう。

嶋田さん:モデル撮影の合間に撮影場所周辺の風景も入れて作品を作っていました。それをある人に見せたら「ビルの写真も面白いね」と言ってもらって、それでビルだけを撮ってみようと始めました。

モデルに向き合う時と一緒で、ひとつひとつのビルについて歴史や背景をじっくり調べてから撮影を行うという嶋田さん。作品に登場するビルは新旧さまざまですが、古きも新しきも等しく、造形の美しさがシンプルに際立つように写されています。
ところで、「気鋭の排他」というタイトル、気になりますよね。タイトルに込めた意味をお聞きしました。

嶋田さん:ビルにはその時代の最先端の意匠が凝らされています。建てられた当初はまさに「気鋭」の存在です。それが時代を経て老朽化すると「排他」されていきます。日本はビルのスクラップ&ビルドを繰り返して成長を続けてきました。でもその繰り返しこそが日本の成長を支えているってことを考えながら撮っていました。

以下、嶋田さんのステートメントから、一部抜粋します。

建造物の建て替えの周期は欧米が約100年、イギリスでは140年。その中で歴史と伝統を重んじる「はず」の日本は30年といわれている。
地震があり、国土に限りがある日本はスクラップ&ビルドを繰り返し、社会を様変わりさせ「麗しき国、日本」を築き上げてきた、といっても大きく外れてはいないはずだ。
現在、コンバージョンやリノベーションといった既存の建築物に付加価値を付け、用途を変えて新しく蘇らせる建築の在り方も注目を集めている。それでも建造物は今後も建てられていくであろう。

ビルの表層から都市の新陳代謝を考える。嶋田さん独自の視点が、作品に奥行を与えている気がします。さて、嶋田さんに今回の展覧会でこだわった点についてお聞きしました。

嶋田さん:一つ一つのプリントを見せることだけではなく、空間全体を含めて「作品」となるように意識しました。個展というと一人で全部作るイメージがありますが、今回は自分の周りにいる仲間にも協力してもらいました。普段自分を支えてくれている人たちと一緒にこの空間を作った、という感じです。

Img_7169▲今回の展覧会を作り上げた4名の方のプロフィールも掲示しております。作品に沿えるテキストはスポーツライターの山口勉さん、作品とコラボレーションするようにギャラリー内に流れる音楽はスタイリストの上野恒太さん、DMをはじめ今回の写真展全般に関わるグラフィックはデザイナーの栗山紗季さん。みなさんカッコいい。『「気鋭の排他」プロジェクト』と勝手に名付けさせていただきます!! 

Img_7165▲ギャラリー内の様子。カッターライトを使用して、作品が立体的に浮き立って見えるような演出に。建物の造形美がシンプルに際立つ印象です。嶋田さん、そして『「気鋭の排他」プロジェクト』の皆様のお人柄と相応し、ギャラリー内はいつになくクールでオシャレな雰囲気です。

Img_7168_1▲今回の展覧会に合わせ作成された「ZINE」。何とカッコいいのでしょう。。。しかも手製本とのこと! 手に取らずにはいられません!! こちらのブックデザイン&制作も、グラフィックご担当の栗山さんが手がけられたとのこと。数量限定販売です!

最後に今後の展望について、嶋田さんにお聞きしました。

嶋田さん:今美容師と写真がいい感じで両立できている感覚があります。たとえば写真をやることによってファインダーの四隅を見るクセがついたのですが、ヘアスタイルも同じで、引いた時にラインがしっかり出ているか、細部までしっかり切れているかを今まで以上に意識して見るようになりました。相乗効果ですね。写真をやってよかったと思っています。こうして個展を開いて在廊すると色々な世代の方がギャラリーに来ます。お話させてもらうと、思いがけない視点でのアドバイスをいただけたりと、とても勉強になります。今回いただいたアドバイスを吸収して、これからも美容師と写真家と二刀流で、自分のスタイルでやっていきたいと思っています。

嶋田さんの個展「気鋭の排他」は29日(木)の14:00まで。日曜は休館ですが、23日の祝日は元気に営業しております。嶋田さんと仲間の皆さんが紡いだ作品世界をぜひギャラリーでご堪能ください。皆様のご来場を心よりお待ちしております。

 エプサイトギャラリー
 嶋田聡史写真展 「気鋭の排他」

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2018年11月09日 | Posted by ギャラリーチーム

開催中!エプサイト・稲田弥恵写真展「猩々蠅(しょうじょうばえ)の囁きに 耳を傾ける」

こんにちは! エプサイトではここ2か月ばかり舞山秀一展、中井精也&川村エミコ写真展と、自主企画の写真展、いわゆる「企画展」が続きましたが、11月2日(金)より、今年度の下期・公募展がスタートしました。5月の公募選考会で選考された7つの作品が、これから来年2月にかけて順次写真展として開催されます。来年の春にはこの7作品の中から、最も優れた展覧会に第3回目の「epSITE Exhibition Award」が選ばれることになります。第一弾は稲田弥恵さんの写真展「猩々蠅(しょうじょうばえ)の囁きに 耳を傾ける」です。

謎めいたタイトルを有するこの作品、実は脳科学基礎研究が行われている最前線の現場が撮影の舞台となっています。人間の脳内における情報伝達のしくみを解くための研究は、実はハエの脳を通じて行われているということを、みなさんご存じでしたでしょうか。もちろん私は知る由もなかったです。

Re_img_1183_2▲ギャラリー内の様子。エプサイトがかつてないほどアカデミックな雰囲気に包まれております。一般の人々が普段立ち入ることの出来ない研究所。断片的に内部の様子が静謐な美しさを纏い表現されています。

撮影の舞台となった研究所ですが、実は稲田さんの勤務先でもあります。まずは今回の作品が生まれたきっかけについてお話を伺いました。

稲田さん:ギャラリー内で1枚目に飾った写真は、ハエを孵化して育てるインキュベーターという装置の中身を撮影したものなのですが、実はこれを見た時に「この異次元の空間を撮らなくてはいけない」と強く思いました。ハエというと一般的にはネガティブなイメージがあると思うのですが、研究所の中でのハエという存在は全く違います。私たちの思考の源である脳については、今なおほとんどのことが解明されていませんが、ハエは私たちに、自分たちの脳の秘密を明かしてくれる重要な存在なのです。ここで見るハエは色々な表情をしていてとても美しいですし、もちろん清潔です。自分の中の既成概念がパッと大きく変わっていくような感覚がありました。

脳の秘密を解く手がかり求め、ハエという小さな存在に、教えを乞うべく日々向き合う研究員たち。脳科学基礎研究の最前線に住まうハエはかくも崇高な生き物なのです。

さて今回、ギャラリー内グレーの壁面は研究所の中の様子を、白い壁面はデザイン的な要素も取り入れ構成されています。注目していただきたいのが、展示プリント。美しいトーンのプリントに思わずため息をついてしまいました。研究所に漂う知的で静謐な空気がプリントにそのまま閉じ込められているかのようです。

稲田さん:用紙は今までに50種類以上試しました。その中でたどり着いたのがキャンソンの「EDITION ETHING RAG」という紙です。この紙はマット紙でありながらも黒のトーンはディテールをしっかりと出ますし、光って欲しいところは光って表現してくれます。光沢紙だとギラギラ生々しくなるところを、光が拡散されて落ち着いた表情になるところが気に入っています。また表面のテクスチャーも絵柄の邪魔をすることはありません。大判プリントはエプソンの「PX/MCプレミアムマット紙」を使っています。
プリンターは、エプソンの「SC-PX3V」とエプサイト・プライベートラボの大判プリンター「SC-P2005PS」を使っていますが、プリントに研究室の「冷たい」雰囲気が出るよう、また暗いところのトーンは暗いだけではなく、ディテールがしっかりでるように、ギャラリーの展示空間を考慮しつつ何度も調整をやり直しました。

また今回、厚いアクリルでプリントをコートして仕立てた作品も展示されています。アクリルの中に閉じ込められた小さな作品は、顕微鏡越しに見るイメージを彷彿させ、こちらもまた素敵です。

Re_img_3257▲アクリル越しに閉じ込められたこの小さな作品は、ハエの脳を真上から写したもの。何だかクマのぬいぐるみのような形にも見えますね。とても不思議です。

Re_img_2015▲対面する白い壁面にも同じ絵柄の作品が大判のプリントが呼応するようかのように展示されております。

最後に稲田さんに、この作品を通して伝えたかったことをお聞きしました。

稲田さん:脳科学研究について少しでも知ってもらいたい、という思いはあります。脳科学は自分たち自身を知ることの重要な手がかりとなります。自分に全く関係ないという事ではなく、とても身近なものなのです。そして基礎科学は全ての研究の源であるということも。手がかりさえない大海の中から砂粒を一粒一粒拾うような果てしない研究ですが、そこが疎かになってはいけないと強く思うのです。

脳の仕組みという壮大な疑問に向き合う研究と、それを仄かに明かしてくれるハエという存在。その根本に「美」を見出した稲田さんの感性。ぜひギャラリーの現場で感じて欲しいと願っています。
展覧会は今月15日の14:00まで(日曜は休館)。 皆様のご来場を心からお待ちしております。

 

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